Wood Report 5 木材と住宅

1 国内の森林資源の現状
  • 1.森林資源と木材の需要、供給
  • 2.木材の需給動向
  • 3.木材価格の推移
  • 4.住宅着工の動向
2 木材の流通
  • 1.木材流通の現状
  • 2.丸太の流通
  • 3.製材品の流通
3 木材の特性
  • 1.木材の構造
  • 2.木材の利用と環境
  • 3.木材の乾燥
4 木材と住環境
  • 1.住まいと湿度
  • 2.木材の暖かさと断熱効果
  • 3.床材の安全性と快適性
  • 4.目にやさしく美しい木目
  • 5.木の香りと健康
5 木材と住宅
  • 1.建築材料としての特性
  • 2.建築材料としての木質材料
  • 3.建築基準と木材が使える範囲
  • 4.木造建築物と工法

5 木材と住宅

1.建築材料としての特性

木材の異方性
樹木の構造で述べたように、木材は細胞の集合体で、それらの細胞の配列によって、それぞれの樹種に固有の組織構造が形成されています。木材には、繊維方向、放射方向、接線方向の3つの軸があります。また、それらのうち2軸がそれぞれ柾目面、板目面、木口面を構成しています。木材の強度、加工性などは、この軸方向によって異なり、これを一般に木材の異方向と呼んでいます。

木材の強度
一般に構造物を構成する柱、梁、土台などの部材には、圧縮、引っ張り、曲げ、せん断、めりこみなどの力が単独または複合して生じます。異方向を強度的性質からみると、柱のように縦に使われるときに作用する力に対しては強いのですが、土台や梁のように横にして使われるときに作用する力に対しては比較的弱いのです。
また、木材は天然素材ですから、節、目切れ(繊維方向の傾斜)、丸身などがあり、それらが強度を低減する要因にもなります。それで構造物を安全に設計するために、製材品には日本農林規格(JAS)で決められた等級があり、部材に許される上限の強度が決められています。これが許容応力度です。
部材に生ずる応力(強度、単位面積当りの力)がこの値を超えた場合は、安全性の保証は期待できないことになります。例えば、JASの「針葉樹の構造用製材の日本農林規格」は構造材を主な対象として制定されたもので、この基準で選別されたものは強度性能が保証されます。

構造材料としての木材
木造の建物は重量が軽いので、地震時に建物に加わる地震力が比較的小さく、基礎工事費も少なくて済む利点があります。さらに、木材は軽く運搬費が割安になるほか、現場での組み立ても大部分が人力ですみ、施工費の軽減が図れます。
このほか、木材は、鉋、鋸、ノミなど比較的簡易な道具、機械で各種加工ができ、エネルギー消費も少なくてすみます。また、木材を継手・仕口で組み合わせたり、金物類で接合したり、接着剤で張り合わせたりすることによって自由な造形もできます。

2.建築材料としての木質材料

製材品
製材とは、丸太などの木材を鋸引きした角材や板などの製品をいいます。製材という言葉には、そうした製品を作ることも含まれますので、ここでは、材料としての製材を「製材品」と呼ぶことにします。国内では、軸組み工法(構法)と呼ばれる工法の住宅が主体となっていますが、その構造を支えている柱、梁、桁、土台等のほとんどに製材品が使われ、使用部位に応じて様々な寸法のものが生産されています。
例えば、断面寸法10.5cmや12.0cmの角材は、主として土台や柱用です。長さ6mで12.0cm角のものは通し柱用で、13.5cmのものも生産されています。10.5×15.0cmや12.0×24.0cm等の一般に平角と呼ばれている材は、主として梁・桁用です。また、このほかにも、板状のものや棒状のものが多数あり複雑ですが、日本農林規格(JAS)では、寸法の標準化を進めるための規定を設けています。
製材品には次のような5つのJASがあり、それぞれに品等区分、寸法規程や含水率基準や表示方法が定められています。

①針葉樹構造用製材
②針葉樹造作用製材
③針葉樹下地用製材
④広葉樹製材
⑤枠組壁工法用製材

さらに、針葉樹構造用製材のJASでは、使われ方で材を甲種、乙種に分けています。甲種は、土台、梁・桁柱など横使いされるのもので、乙種は柱など縦使いされるものです。それぞれに強度性能に対応した等級区分と、乾燥と防腐・防蟻性能による区分があります。また、小節、上小節、無節などの表示は、材面の見た目の美しさの等級で、針葉樹造作用製材の規格に定められています。

合板
木材の特性は、すでに説明したように非常に異方性が強いということです。繊維方向と直角方向では強さが全く違います。また、伸び縮みも同様です。この異方性を改良したのが合板です。合板は、丸太を薄くむき(単板、ベニア)それを縦と横を十文字に交互に張り合わせることによって異方性を改良するとともに、製材品では得られない面としての広がりを持たせた材料です。
合板の品質のポイントは接着力です。このため、JASでは、接着耐久性による区分を設けています。耐久性の高い順に、特類、1類、2類となります。特類は住宅の耐力壁(強度を要求される壁)の部材として、また湿度の高い場所でも使える接着耐久性を持った材料です。
合板にもいくつかの種類があります。用途や製法に応じて、合板のJASでは「普通合板」「コンクリート型枠用合板」「構造用合板」「天然木化粧合板」「特殊加工化粧合板」の5品目を定めています。なお、合板にさらに性能を付与したものとしては、建築基準法の内装制限の指定場所に使われる不燃処理したものもあります。また防腐処理、ヒラタキクイムシ対策として防虫処理をしたものもあります。
また、JASとJISの規格では、接着剤から放散するホルムアルデヒドの抑制と使用者の選択の指針とするため、拡散量に対応した等級を定め、その表示を義務付けています。以下に述べる集成材、単板積層材、繊維板、OSBにも同様の規格があります。合板の原木は、南洋材のラワン、メランチ材が中心ですが、最近では、再生産可能な資源としてラジアータマツ、カラマツなどの針葉樹も使われるようになっています。国産広葉樹では、シナ、カバ、センなどが使われていますが、資源的制約があり、使用量はほんのわずかです。

集成材
ひき板や小さい角材をほぼ平行にそろえて、長さ、幅、厚さ方向に接着したもので、自由な大きさや形(例えば湾曲したもの)が製造できます。また、十分に乾燥した木材が使われ、製造過程で大きな節などの欠点が除去・分散されるためくるいが少なく強度的にも高い性能をもっていることから、広く使われています。
集成材には、構造用のものと造作用のものがあります。構造用は、製材品と同じように木造住宅の柱や梁・桁として広く使われていますが、特に大型木造建築にはなくてはならない材料になっています。
造作用は、主として強度に影響しない部分に使われるもので、建築分野では敷居・鴨居・なげし・階段まわり、内装材(壁・天井・床)、化粧柱などのほか、家具、建具などとしても使われています。
なお、JASでは、「集成材」と「構造用集成材」の2本建てになっていますが、住宅用に限定した化粧張り柱は、構造用ですが、規格上は「集成材」に含まれています。集成材に使われる樹種は、構造用では、杉、桧、松、ベイツガ、オウシュウアカマツ、ホワイトウッドなどで、これらの樹種は造作用にも使われます。

木質ボードと構造用パネル
パーティクルボードやファイバーボード及び構造用パネルは、まとめて木質ボードと呼ばれています。木質ボードは、木材を主原料にしていますが、木材をそのまま用いるのではなく、細かく分割し、それを接着剤などで再構成したものです。構成する要素によって、様々な特性を持った製品となります。小さく砕いた木片を原料にしたのがパーティクルボードで、木片を繊維化して製造したボードがファイバーボードです。これらの原料は、従来は合板工場のラワンの剥ぎ芯や製材工場の端材でしたが、最近では、住宅解体材や梱包材、パレットの廃材が主体を占めるようになっています。
一方構造用パネルは、木材の小片を原料にしていますが、比較的大きい木片で製造したボードで、北米で低質広葉樹の活用と合板代替材として開発されたものです。

3.建築基準と木材が使える範囲

建築基準と木材
建築基準の中で木材は防火面から様々な制約があります。これは、木材は燃えるという性質をもっていますので、ある程度は仕方がないことですが、過度の制約は人間の感性や健康にふさわしくない無機質の空間を生み出してきました。近年、木材関係者だけではなく建築家の中にも木材を新しい材料として見直す動きがあり、木材や木造建築に対する性能把握や研究開発も進み、その成果が建築基準にも反映されるようになっています。
また、建築基準は、平成12年には、従来の「仕様」を中心とした基準から「性能」を中心とした基準に移行しました。つまり性能さえ証明すればどんな構造でも建てられるということで、木材の利用範囲拡大の可能性が高まったといえます。なお、平成14年建築基準法が改定され、ホルムアルデヒドが空気環境汚染物質として厳しく規制されることになりました。

内装材としてどこまで使えるか

・戸建て住宅
戸建て住宅の内装には原則制限がありません。学校、事務所も同様です。ただし、台所等火気使用室の壁・天井は準不燃材料を使用する必要があります。

・劇場、病院等
劇場、公会堂、病院、ホテル、共同住宅、百貨店などのように不特定多数の人が利用する建物(特殊建築物)では、難燃材料、準不燃材料が指定されています。しかし、一定の規模や階級以下の建物には、制限が無く木材が使えますのでよく調べる必要があります。なお、鉄筋コンクリート建てのマンションで防火区画されている面積が200㎡以下であれば木材は使えます。また、難燃指定されている場合でも一定の要件を満たせば壁に木材が使用できるという下記のような特例があります。

特例:特例を受けるための用件(壁)
①天井の仕上げを準不燃材料とすること
②木材の表面に火炎伝播を助長させるような縦溝がないこと
③木材の厚さが10mm未満の場合は準不燃材料の壁に直接貼り付けること

・腰壁
床から1.2mという制約がありますが、腰壁には特殊建築物でも居室であれば原則木材が使えます。なお床については、法的に何もありません。

木材で建てられる構造と規模
建築基準の性能規定化により、火災が終了するまで倒壊や延焼を起こさないことが、「耐火性能検証法」により確かめれれば、どのような地域・用途・規模であっても、木造で建てられるようになりました。もちろん、従来から次のように一定の基準を満たせば、木造でも建てられるようになっています。

・22条地域外
この地域は、延べ面積3,000㎡以下であれば木造に対する制限はありません。

・22条地域
この地域も、延べ面積3,000㎡以下であれば木造とすることができますが、外壁等で延焼の恐れのある部分は防火処置を施す必要があります。

・準防火地域
3階建て以下で、延べ面積が500㎡以下であれば木造とすることができます。もちろん延焼の恐れのある外壁等には延焼防止処置を講ずる必要があります。なお、3階建ての場合には、火災により建築物が容易に倒壊しない設計を行うことが条件です。また準耐火構造にすれば、3階建てでも1,500㎡まで木造で建てられます。

・防火地域
この地域では、ほとんど木造は建てられませんが、準耐火構造とすれば2階以下、100㎡以下であれば建てられます。

・特殊建築物
病院や共同住宅等不特定多数の人が利用する建物は原則耐火建築としなければなりませんが、一定の規模や階数以下のものは準耐火建築物等にすることで木造で建てられます。3階建て共同住宅も建てられるようになっています。

住宅の品質確保の促進等に関する法律
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、品確法)が平成12年に施工されました。この法律は、「瑕疵担保責任の特例」と「住宅性能表示制度」の2本柱からなり、消費者が安心してマイホームを新築したり購入できるようにしたものです。

・瑕疵保障の特例
この制度のポイントは、新築住宅について、基本構造部分の瑕疵担保責任の期間を10年間義務付けたということです。民法では、瑕疵担保責任期間は、原則10年、木造で5年と規程してます。しかし、特約を結ぶことによってその期間を短縮できることになっていたため、実際には短縮して契約している場合が多く、何年か住んで不具合が発生しても瑕疵担保責任に基づく修繕や損害賠償を請求できないという問題がありました。
この法律ができたことによって、特約による期間短縮ができなくなりましたので、10年以内であれば泣き寝入りしなくともよくなったということです。ただし、全てが保障されるわけではありません。対象となるのは、基本構造部分である「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」です。

・性能表示制度
この制度は、住宅を購入するときの共通となる性能表示の基準を整備して、この住宅がどのような性能を持っているかを分かりやすくしようというものです。一般消費者に住宅選択の指標となる共通のものさしを示すとともに、運用の仕組みを定めた制度です。この制度では、「構造安全性」「火災安全性」「光・視環境」「音環境」「高齢者への配慮」の9項目に分け、建てられた家が、表示どおりの性能であるかどうかを第三者機関が、設計段階、完成段階の2度にわたって評価するものです。この中で、「空気環境」には、有害物質(ホルムアルデヒド)対策が含まれている。
各項目ごとに、適用範囲(一戸建ての住宅または共同住宅等)が設けられ、性能水準に応じて等級(1、2、3、など数値が大きいほど上位等級)で表示されますが、項目によって数値または措置対策で示されています。なお、注意していただきたいのは、瑕疵保障責任による10年の特例は法律的に強制適用であるのに対して、この制度は当時者同士の意思による選択制だということです。
品確法の制定は木質建材にも大きな影響を与えています。この法律は、一部を除き、直接使用材料を規制したものではありませんが、設計・施工する側は当然のことながら材料に品質の確かなものを求めるようになってきています。例えば、集成材の需要が非常に増えてきています。これは集成材が十分に乾燥し寸法安定に優れ品質がそれっているためです。製材品もしっかり乾燥したものを供給する必要に迫られています。

4.木造建築物と工法

木造軸組工法住宅
わが国で古くから親しまれてきた木造住宅は、図に示すような軸組工法によるものです。この工法は、地域の人々が周知を集め、長い時間をかけて、それぞれの地域の気候・風土などの自然条件はもとより、資源・産業にかかわる生産条件や文化・習慣などの社会的条件にも合うように工夫をこらして育成してきたものです。
軸組工法は、柱となり、桁、土台等の横架材で骨組みを構成するのが特徴です。なお、この工法には構造耐力上主要な部分にあたる壁の作り方に、真壁造りと大壁作りとがあります。真壁造りとは、間柱の見込み厚さ(奥行き)を柱幅より短くし、柱を壁面に露出させる方法で、柱が構造材と造作材を兼ねるものです。柱の種々や材面の意匠的価値が重視され、日本間に適しています。大壁作りとは、間柱の見込み厚さ(奥行き)を柱幅と等しくし、柱を壁面に露出させないため、柱は構造材としての機能を果たすだけで、洋館に適しています。

枠組壁工法(ツー・バイ・フォー)住宅
枠組み壁工法は、北米のプラットフォーム構造を導入したもので軸組工法とは構造体系が異なります。枠組壁工法は、ディメンションランバー(枠組壁工法構造用製材)といわれる一定の基本サイズの部材で床、壁、小屋など枠組をつくり、それらに構造用合板などの面材を張り、構成材相互は釘および接合金物で一体的に固めていることです。軸組工法との違いは、次のような点があげられます。

①床板が建物の外周線まで敷き詰められている。
②1階と2階の縦枠が通しになっている。
③枠組を構成する木材の形式寸法が規程されている。
④継手・仕口が簡易で、構成材が全て釘および接合金物で緊結されている。

この他、小屋組がたるき構造であることや、トラスが用いられることもあげられます。施工の順序も異なり、基礎工事、1階床組、1階壁組とその建ておこし、続いて2階床組、2階壁組とその建ておこし、小屋組という具合に、下部から上部に向かって組み立てられていきます。

大断面集成材建築物
わが国で集成材の生産が開始されたのは、昭和20年代後半で、アーチ構造のものが多くみられました。しかし、34年に建築基準法に簡易耐火建築物の規定が新設され、その影響が補助金に依存している教育施設にも及び、同30年代の末には大規模な木造建築物は影をひそめてしまいました。
しかし、昭和50年代の半ばから、木材業界の大規模木造の復権に対する願いが強くなり、57年には建築基準法38条の特認を取得し、一定の条件を満たす集成材の建築物は従来の木造建築物より規制が緩和されることになりました。また、林野庁が昭和60年度から実施した「モデル木造施設建設事業」や、建設省が61年度から実施した「新木材建築技術の開発」に関する総合プロジェクトの成果などにより、大断面集成材による建築物に対する設計技術がいちじるしく進歩しました。
昭和62年の建築基準法令の改正では、小辺が15cm以上、断面積300c㎡以上の集成材を用いた「大断面木造」に燃え代設計の手法が適用され、さらに平成4年の同法令の改正では、従来の「簡易耐火建築物」に代わって「準耐火建築物」の規定が新しく設けられ、木造(大断面集成材構造)であっても、一定の耐火性能が確保されれば、鉄骨造と並んで建築できるようになり、建築できる範囲が大幅に拡大しました。